第12回ソノケミストリー討論会特別講演
音響化学療法の基礎と臨床
立花克郎 (福岡大学医学部 解剖学教室)
超音波エネルギーを体の一部に集中させ、限局された部位で薬物を化学励起さ
せる新しい癌治療方法が考案されている。ヘマトポルフィリン誘導体は本来光
エネルギーで励起される物質で、現在臨床でこの性質を応用した癌の光化学療
法がすでに実用化されているが、超音波エネルギーでも同様の励起作用がある
ことが発見され、新しく音響化学療法(Sonodynamic Therapy)として注目され
ている。この薬物の細胞親和性を利用することで特定の癌細胞を選択的に超音
波で殺傷できることが可能である。成人T細胞白血病細胞に超音波感受性薬物
ポルフィーマナトリウムが選択的に取り込まれるため、音響化学療法で血液を
処理すると白血病細胞のみが殺傷され、正常白血球は温存されることが我々の
研究で明らかになった。また大腸癌の肝転移および乳癌の皮膚転移における音
響化学療法の臨床有効例も発表されており、本格的な臨床治験が今まさに開始
されようとしている。
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